炭と珈琲

七輪焙煎:炭と珈琲が織りなすドラマ

インドネシアの炭コーヒー:コピ・ジョス

アジアで名高いコーヒーの産地といえば、インドネシア

酸味は控えめで重厚感のある、スマトラ島のマンデリンにスラウェシ島のトラジャ。品質の高さと希少性から高級銘柄として知られています。

コピ・ルアック(ジャコウネココーヒー)もインドネシアです。ジャコウネコが食べたコーヒーチェリー。体内の発酵プロセスを経て排泄されたコーヒー豆を集める、めずらしいコーヒーです。深いコーヒーの味が美味しいコーヒーキャンディ、コピコもインドネシアの商品です。

そして、コピ・ジョス。インドネシアの炭コーヒーです。

本ブログのタイトル「炭と珈琲」そのもの、コピ・ジョスとは?

コピ・ジョスの誕生秘話

1980年代に始まったコピ・ジョス。

なんとびっくり、あつく熱した炭をコーヒーに入れる飲み物でした。

コピはコーヒー、ジョスは炭をコーヒーに投入した時の音に由来しています。コピ・ジョスが誕生したのは、インドネシアはジョグジャガルタのコーヒー屋さん。

ある時、電車の運転手もしくは乗客が店に来て、コーヒーを鍋で沸かしてくれと言いました。お客さんは、きっと急いでいたのでしょう。お店はすぐに出せるように、赤く燃えた炭をコーヒーに入れました。お客さんは喜んで、何度も来店しては炭をコーヒーに入れるよう頼みました。知り合いを連れてきたりしているうちに、コピ・ジョスは人気が出て看板メニューに、そしてご当地グルメに。


コピ・ジョスを試してみた!

上の動画にあるように インドネシアではコーヒーの粉をグラスに入れて熱湯を注ぎます。 私は飲みやすさ重視で、いつも通り、コーヒーをペーパーフィルターで入れました。マンデリンやトラジャを意識して、コクのある深煎りのコーヒーです。

火のついた炭に水をかけるのは、とても危険。その禁断の行いをするのです。

ドキドキして赤く燃える消炭のかけらをコーヒーに入れると(消炭についてはこちらをどうぞ)、ジュッというような音と共にスモーキーな香りがたちました。

これは面白い。

ふだん、眠っている、自分の中の野生の何かが小さく揺さぶられる感覚。味の変化は特に感じませんでしたが、また注文したくなる気持ちがわかります。

一つ気をつけたいのが炭の破片。炭の塊は取り出しましたが、コーヒーに入れた衝撃で砕けた炭が底に沈んでいました。本場では、カップの底にコーヒーの粉があるので、破片を一緒に飲むことはありません。けれど、粉をこしたコーヒーだと、砕けた破片が漆黒の液体の底に潜んでいるのに気がつかず、飲んでしまうところでした。

おわりに

コピ・ジョスのルーツには、店主が健康のためにコーヒーに炭を入れ始めたという説もありました。どちらが本当かわかりませんが、コピ・ジョスを試してみて、旅人が熱いコーヒーを所望して気に入ったのがきっかけ、に一票を投じたくなりました。

自分でやるのも楽しいけれど、旅先のカフェでこんな演出があったら、忘れられない思い出になること間違いなしです。